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大阪地方裁判所 昭和63年(ワ)2598号 判決

原告

宇都宮満輝

被告

石田芳明

ほか五名

主文

一  被告石田芳明、同山田哲央、同野中和幸は、各自、原告に対し、六九一万〇七二一円及びこれに対する昭和五八年八月二一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告日産火災海上保険株式会社は、原告に対し、三〇六万六〇〇〇円及びこれに対する昭和六三年四月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告安田火災海上保険株式会社は、原告に対し、四八六万三六六五円及びこれに対する昭和六三年四月一六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告のその余の請求を棄却する。

五  訴訟費用はこれを一〇分し、その一を被告らの、その余を原告の負担とする。

六  この判決は、第一ないし第三項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告石田芳明、同山田哲央、同野中和幸は、各自、原告に対し、九二九三万二二一五円及びこれに対する昭和五八年八月二一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告日産火災海上保険株式会社は、原告に対し、一〇〇七万六〇〇〇円及びこれに対する昭和六三年四月一六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

3  被告安田火災海上保険株式会社は、原告に対し、二五〇〇万六〇〇〇円及びこれに対する昭和六三年四月一六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は被告らの負担とする。

5  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する被告らの答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  交通事故の発生

(一) 日時 昭和五八年八月二〇日午後七時四五分ころ

(二) 場所 兵庫県川西市久代二丁目一番一号先路上(国道一七六号線路上、以下、「本件事故現場」という。)

(三) 第一事故車両 普通乗用自動車(登録番号、神戸五八ね三五三号、以下、「野中車」という。)

右運転者 被告野中和幸(以下、「被告野中」という。)

(四) 第二事故車両 普通乗用自動車(登録番号、神戸五八ひ六〇三三号、以下、「山田車」という。)

右運転者 被告山田哲央(以下、「被告山田」という。)

(五) 第三事故車両 普通乗用自動車(登録番号、大阪五七ろ四七一九号、以下、「石田車」という。)

右運転者 被告石田芳明(以下、「被告石田」という。)

(六) 被害車両 原動機付自転車(登録番号、宝塚市ぬ八七二号、以下、「原告車」という。)

右運転者 原告

(七) 態様 本件事故現場の道路の西行車線を、運転者不明の自動車に続いて、野中車、山田車、石田車の順で走行中、右各車両が前方の停滞のために運転者不明の自動車を先頭にして玉突状に追突して急停車し、その際石田車が車体後部を左(南)へ振つたため、石田車の左後方を走行していた原告車が、石田車の左後部に衝突して転倒した(以下、「本件事故」という。)。

2  責任原因

(一) 被告野中、同山田、同石田の責任

本件事故当時、被告野中は野中車を、被告山田は山田車を、被告石田は石田車を各所有してこれを自己のために運行の用に供していたから、自動車損害賠償保障法(以下、「自賠法」という。)三条に基づき、本件事故によつて生じた損害を賠償する責任があり、右の被告三名の不法行為責任は、民法七一九条所定の共同不法行為の関係にあるから、右被告三名は、各自、原告に対し、後記全損害を賠償すべき義務がある。

(二) 被告日産火災海上保険株式会社の責任

被告日産火災海上保険株式会社(以下、「被告日産火災」という。)は、被告石田との間で、石田車を被保険自動車として、同車の運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、自賠法施行令二条一項所定の保険金を支払う旨の自動車損害賠償責任保険(以下、「自賠責保険」という。)契約を締結していたから、自賠法一六条一項に基づき、右保険金額の範囲で本件事故によつて原告に生じた損害額を支払義務がある。

(三) 被告安田火災海上保険株式会社の責任

被告安田火災海上保険株式会社(以下、「被告安田火災」という。)は、被告山田との間で、山田車を被保険自動車として、被告野中との間で、野中車を被保険自動車として、それぞれ前同様の自賠責保険契約を締結していたから、自賠法一六条一項に基づき、自賠法施行令二条一項所定の保険金額の二倍の額の範囲で本件事故によつて原告に生じた損害額を支払う義務がある。

3  損害

(一) 受傷内容、治療経過及び後遺障害

(1) 受傷内容

原告は、本件事故により、右大腿骨骨折、右手第五指脱臼、頭部外傷、腰部挫傷の傷害を受けた。

(2) 治療経過

原告は、前記傷害の治療及びそのために受けた手術の際の輸血によつて感染した非A非B型慢性肝炎の治療のため、医療法人尚和会第一病院(以下、「第一病院」という。)に次のとおり入・通院した。

〈1〉 昭和五八年八月二〇日から同五九年四月一日まで入院

〈2〉 昭和五九年四月二日から同年一一月一〇日まで通院(実日数五三日)

〈3〉 昭和五九年一一月一一日から昭和六二年一〇月三一日まで入院

〈4〉 昭和六二年一一月一日から同月七日まで通院(実日数五日)

〈5〉 昭和六二年一一月八日から同月一〇日まで入院

〈6〉 昭和六二年一一月一一日から同月二七日まで通院(実日数一四日)

〈7〉 昭和六二年一一月二八日から昭和六三年二月一〇日まで入院

〈8〉 昭和六三年二月一一日から同年三月二四日まで通院(実日数二五日)

〈9〉 昭和六二年三月二五日から同年六月一四日まで入院

〈10〉 昭和六二年六月一五日以降通院継続中

なお、原告の非A非B型肝炎は、前記傷害の治療のために三回にわたる手術を必要とし、その手術の際の輸血によつて感染したものであるところ、輸血前に非A非B型ウイルスを持つた血液を発見して除外することはできず、輸血時に一定割合による非A非B型肝炎ウイルスの感染が生ずることは回避できないものであるから、原告の肝炎への罹患及びそれによる後記の肝機能障害の発生は本件事故と相当因果関係があるというべきである。

(3) 後遺障害

原告は、前記のとおり治療を受けたが、右傷害及び肝炎は完治するに至らず、右下肢短縮、右膝関節の機能障害及び肝機能障害の後遺障害を残したまま、昭和六三年一〇月ころ、その症状が固定した。

なお、右後遺障害については、自賠責保険において、昭和五九年八月一八日にその症状が固定し、右下肢短縮が自賠法施行令二条別表の一〇級八号に、右膝関節の機能障害が同一〇級一一号にそれぞれ該当するものとして、併合九級の認定がなされているが、右に症状が固定したとされている時期には、原告の右大腿骨の骨折部は未だ仮骨形成が不良で偽関節状態にあり、プレート固定により骨癒合の進行を観察中であつたのであるから、到底症状が固定しているとはいえず、同時期の医師の診断書にも症状固定日欄の記載はない。また、原告には、右認定の後遺障害のほかに、前記のとおり肝機能障害があつて、これにより特に軽易な労務以外の労務に服することができないのであるから、右肝機能障害は同五級三号に該当し、従つて、原告の後遺障害はこれらを併合すると同四級に相当するものというべきである。

(二) 損害額

(1) 付添看護費 二六万八〇〇〇円

原告は、前記入院期間のうち、昭和五八年八月二〇日から同年九月二七日まで、同五九年一月七日から同月一八日まで、同年一一月一一日から同月二六日までの合計六七日間付添看護を必要とし、妻公子による付添看護を受けたので、一日当たり四〇〇〇円、計二六万八〇〇〇円相当の損害を被つたものというべきである。

(2) 入院雑費 一三八万五〇〇〇円

原告は、前記入院期間中に一日当たり少なくとも一〇〇〇円、合計で一三八万五〇〇〇円を下らない雑費を要した。

(3) 休業損害 一四一〇万三九一三円

原告は、本件事故当時、訴外株式会社太陽神戸銀行に勤務して一か月平均四二万五五四七円の給与及び賞与の支給を受けていたが、本件事故による受傷及び前記の肝機能障害のために、事故日である昭和五八年八月二〇日から同六三年九月まで休業を余儀なくされ、その間昭和五九年から同六二年までの毎年四月に各四パーセントの昇給があつたものと推認されることも考慮すれば、合計二八〇一万二〇六〇円の給与及び賞与得られたはずであつたところ、実際には合計一三九〇万八一四七円を支給されたのみであるから、右期間中にその差額である一四一〇万三九一三円の休業損害を被つたことになる。

(4) 後遺障害による逸失利益 六八四九万七四〇六円

原告は、前記の後遺障害、特に肝機能障害により無理が利かず、事実上就労不可能の状態にあるから、少なくともその労働能力の九二パーセントを喪失したものというべきである。そこで、本件事故当時の平均年収である五一〇万六五六四円を基礎収入とし、就労可能期間を四五歳から六七歳までの二二年間として、ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して、後遺障害による逸失利益の症状固定時の現価を算定すると六八四九万七四〇六円(一円未満切り捨て)となる。

(計算式)

5,106,564×0.92×14.58=68,497,406

(5) 慰謝料 一六〇〇万円

原告が前記受傷のために受けた肉体的・精神的苦痛に対する慰謝料は、治療中の分として三〇〇万円、後遺障害等に対する分として一三〇〇万円、合計一六〇〇万円が相当である。

4  損害の填補

原告は、本件事故につき、前記の被告らの間の自賠責保険契約に基づき、被告日産火災、同安田火災(被告山田との契約分から支払)から、傷害による損害(後遺障害によるものを除く)につき各一二〇万円、後遺障害による損害につき各三六五万四〇〇〇円、合計九七〇万八〇〇〇円の支払を受け、これを前記損害に充当した。

5  弁護士費用 八〇〇万円

原告は、本件訴訟の提起及び追行を原告訴訟代理人に委任し、その費用及び報酬として認容額の一割を支払うことを約したので、右支払約束額のうち八〇〇万円を本件事故と相当因果関係のある損害として請求する。

よつて、原告は、被告石田、同山田、同野中に対し、本件事故による損害賠償として、前記損害金合計九八五四万六三一九円のうち、九二九三万二二一五円及びこれに対する本件不法行為の日の翌日である昭和五八年八月二一日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を、被告日産火災に対し、自賠法一六条一項に基づき、自賠法施行令二条一項所定の傷害(後遺障害によるものを除く。以下、同じ。)に対する保険金額一二〇万円と同施行令別表四級の後遺障害の保険金額一三七三万円の合計額である一四九三万円から支払を受けた四八五万四〇〇〇円を控除した残額である一〇〇七万六〇〇〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和六三年四月一六日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を、被告安田火災に対し、自賠法一六条一項に基づき、前同保険金額の合計額一四九三万円の二倍である二九八六万円から支払を受けた四八五万四〇〇〇円を控除した残額である二五〇〇万六〇〇〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和六三年四月一六日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を、それぞれ求める。

二  請求原因に対する被告石田、同山田、同野中の認否

1  請求原因1のうち、石田車が車体後部を左(南)へ振るようにして停車したとの点は否認するが、その余の事実は認める。

但し、各事故車両の追突の順序は、まず、山田車が野中車に追突し、次いで石田車が山田車に追突したために、山田車とともに野中車も前方に押し出されて野中車がその先行車に追突し、その後に原告車が石田車に追突したものである。

2  同2については、本件事故当時、被告石田が石田車の、被告山田が山田車の、被告野中が野中車の、各運行供用者の地位にあつたことは認め、被告らの責任が共同不法行為の関係にあるとの主張は争う。

3  同3(一)のうち、原告の非A非B型肝炎への感染及びこれによる肝機能障害の発生と本件事故との間の相当因果関係並びに原告の後遺障害の症状固定時期が昭和六三年一〇月ころであるとの点は否認し、その余の事実は知らない。

原告の後遺障害の症状固定日は昭和五九年九月二六日であり、また、輸血による非A非B型肝炎ウイルスの感染を完全に防止することはできないとしても、原告の肝炎の発症は、症状固定後である昭和五九年一一月一一日に右大腿骨の骨折部を繋いでいたプレートが破損したためにその再固定手術を受けた際の輸血による感染が原因であり、症状固定後の治療に伴う輸血を原因とする肝炎の発症と本件事故との間には相当因果関係がないというべきである。

4  同3(二)は争う。

5  同4の事実は知らない。

6  同5は争う。

三  請求原因に対する被告日産火災、同安田火災の認否

1  請求原因1、3、5の認否は、3(一)につき、原告の後遺障害が併合九級であるとの認定がなされていることを認め、原告の後遺障害の症状固定日を昭和五九年八月一八日と主張するほかは、被告石田、同山田、同野中と同じ。

2  同2については、本件事故当時、被告石田が石田車の、被告山田が山田車の、被告野中が野中車の、各運行供用者の地位にあつたこと、被告日産火災が被告石田と、被告安田火災が被告山田及び同野中と、主張のとおりの内容の自賠責保険契約を締結していたことは認める。

3  同4の事実は認める。

四  抗弁

1  免責(被告石田、同山田、同野中)

原告車の石田車への追突は、もつぱら原告の前方不注視、車間距離保持義務違反の過失によつて発生したものであり、野中車、石田車及び山田車は、先頭の運転者不明の自動車が停止している以上、どのようなブレーキ操作をしても現実に停止した各地点より前で停止することは不可能であつて、それぞれの後続車からの追突を回避できる可能性はなく、他方、停止した右各事故車両の左側には路側帯を含めると単車が十分通行できる約一・五メートルの走行余地があつたのであるから、被告石田、同山田、同野中には、少なくとも原告の石田車への追突と相当因果関係のある過失ではなく、また、右各事故車両には、右追突と相当因果関係のある構造上の欠陥又は機能の障害はなかつたというべきである。

2  免責(被告日産火災、同安田火災)

本件事故は典型的な追突事故で、このような場合、特段の事情のない限り、追突車に全面的な過失があるというべきであるところ、石田車は、本件事故現場付近を時速四〇キロメートルで走行中、山田車が急停車したため、急制動の措置をとつたが間に合わず、これに追突して停止し、その二ないし三秒後に原告車に追突されたものであるから、石田車の運転者である被告石田には、少なくとも原告車の追突と相当因果関係のある過失はないというべきである。

また、野中車は、本件事故現場付近を時速三〇ないし四〇キロメートルで進行中、前方の車両が約一〇〇メートル先の交差点の赤信号のために順次停車したのに従つて先行の運転者不明の自動車が急停止したので、右先行車の約二メートル後方に急停止したところ、その直後に山田車に追突され、続いて石田車が山田車に追突した衝撃によつて前方に押し出されて右先行車の後部に軽く追突したものであり、山田車も先行車である野中車が急停止したので、これへの追突を避けようとしてやむをえず急停止措置をとつたものである。

右のとおり、被告野中及び同山田は、いずれもその先行車への追突を避けるためにやむを得ず急停止措置をとつたもので、いわゆる理由のない急停止ではないから、後続車の追突事故についての過失はないというべきである。

本件事故は、前方注視を怠つたうえに、先行車との間に速度に応じた安全な車間距離を置かなかつた原告の過失によつて発生したものであり、本件事故当時、石田車、山田車、及び野中車には構造上の欠陥又は機能の障害はなかつたから、石田車、山田車及び野中車の各保有者である被告石田、同山田、同野中は、自賠法三条但書により本件事故による損害の賠償責任はなく、従つて、右各事故車両の自賠責保険契約の保険者である被告日産火災、同安田火災にも保険金額の支払義務はない。

3  消滅時効(被告石田、同山田、同野中)

原告が本件事故によつて受けた傷害については、昭和五九年九月二六日にその後遺障害の症状が固定し、損害も確定しているので、原告の本件受傷による損害賠償請求権の消滅時効は遅くとも同日から進行しており、本訴提起までに既に三年を経過しているから、被告石田、同山田及び同野中は、右時効を援用する。

4  消滅時効(被告安田火災)

原告の被告安田火災に対する同被告と被告野中間の自賠責保険契約にかかる自賠法一六条に基づく損害賠償額の支払請求については、遅くとも被告安田火災が原告の請求に対し、被告野中は同法三条但書により免責されるべき場合に当たるとして支払拒否の通知をした昭和五九年七月一一日には、消滅時効が進行を開始しているものというべきであるところ、本訴提起までに既に同法一九条所定の二年を経過しているから、被告安田火災は右時効を援用する。

五  抗弁に対する認否

1  抗弁1、2は否認する。

本件事故は、前方の渋滞に気付くのが遅れた先頭車が急ブレーキをかけて追突し、それが前車の急停車という形で順次後方に伝えられ、一瞬のうちに玉突状の追突になつたものであるから、追突した各事故車両の運転者である被告石田、同山田、同野中には、前方不注視ないし車間距離不保持の過失があつたものというべきであり、右過失による追突で各事故車両が急停止し、このために原告は回避のいとまなく石田車に衝突したものである。そして、仮に被告ら主張のとおり、野中車が最初に山田車に追突されているとしても、被告野中に車間距離不保持ないし前方不注視の過失があつたために野中車が急停止しているのであり、これが本件の玉突状追突の誘因となつているから、被告野中に本件事故と相当因果関係のある過失がなかつたということはできない。

原告は、本件事故直前、原動機付自転車の制限速度である時速三〇キロメートルで走行していたところ、各事故車両に順次追い越され、石田車に追い越された直後に石田車が急停止したものであり、しかも、石田車は原告車を追い越した後進路を左に寄せていたため、原告には安全な車間距離をとるいとまはなく、かつ、石田車と車道南端との間には原告車が安全に通行できるだけの空間はなかつたのであるから、原告が本件事故を回避することは不可能であつたものであり、本件事故発生について原告に過失はない。

2  抗弁3及び4は争う。

原告の後遺障害の症状固定は昭和六三年一〇月ころであるから、原告はこの時点まで損害の全容を知ることができなかつたものであり、また、原告は、本件事故後長期にわたつて入院を余儀なくされ、しかも事故発生以来関係者から一貫して「追突だから後車である原告車が悪い。」との説明を受けており、法律知識に疎い原告にとつては、自らの権利を行使し得るような主観的・客観的状況にはなかつたのであるから、前車の運転者である被告石田、同山田が加害者であると知つたのは、早くても退院後一か月経過した昭和六二年三月一〇日とすべきであり、さらに、原告車の三台前を走行していた野中車の運転者である被告野中も加害者であるということは、本訴提起直前に原告訴訟代理人に相談して初めて知ることができたものであるから、被告石田、同山田、同野中に対する各損害賠償請求権についても、被告安田火災に対する同被告と被告野中間の自賠責保険契約にかかる自賠法一六条に基づく損害賠償額支払請求権についても、消滅時効は完成していない。

六  再抗弁

1  被告石田、同山田、同野中による消滅時効の援用は、原告が本件事故後に前記五2のような状況にあつたことに照らせば、信義則に反し許されないものというべきである。

2  被告安田火災は、その主張する症状固定時期の直前である昭和五九年七月一一日に、原告の自賠法一六条に基づく請求に対し、支払拒否の通知をしてきたが、右支払拒否の理由は「野中車は信号に従い停止したところ、山田車、石田車、原告車が衝突したもので過失は認められず。」というものであつて、同被告は、きわめてずさんな調査によつて前提事実について重大な誤認をして支払拒否をしたものであり、右支払拒否は前記五2のような状況にあつた原告に対して、故意又は重大な過失によつて加害者を知ることを妨害したのに等しいものというべきであるから、同被告の消滅時効の援用は信義則に反し許されないものというべきである。

七  再抗弁に対する被告らの認否

再抗弁1、2は争う。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  本件事故の発生

請求原因1記載の日時、場所において、被告石田、同山田、同野中が各運転する事故車両が、先行の運転者不明の自動車に続いて、野中車、山田車、石田車の順で本件事故現場の道路の西行車線を走行中、前方の渋滞のために右先行車を先頭にして玉突状に追突し、その際石田車の後部に原告車が衝突して転倒したことは当事者間に争いがない。

二  被告らの責任

1  前記一の争いのない事実に、成立に争いのない甲第一号証、乙第四号証、丙第六ないし第八号証、原本の存在・成立について争いのない乙第一、第二号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第三号証、被告石田本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる丙第一三号証、昭和六三年当時の本件事故現場の写真であることについて争いのない検甲第一号証の一ないし五、検丙第六、第七号証、原告(第一回)、被告石田及び同野中の各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すれば、本件事故現場は、わずかに左にカーブしているが、ほぼ直線状で東西に走る国道一七六号線のバイパス(片側一車線)の西行車線上であつて、本件事故現場の約八〇メートル東側には信号機によつて交通整理の行われている交差点があり、右交差点から西側は徐々に緩やかな上り坂になつたのち、二〇〇ないし三〇〇メートルにわたつてかなりの傾斜の上り坂が続いているため、右交差点付近から上り坂の頂点付近までの西方の見通しはよいこと、本件事故現場付近の道路は、幅約二〇センチメートルのセンターラインをはさんで、東行車線が幅約二・六八メートル、西行車線が幅約二・九五メートルで、幅約一五センチメートルの白線で画された各車線の外側には、北側は幅約〇・九メートル、南側は幅約〇・四二メートルの路側帯がそれぞれ設置されているアスフアルト舗装道路(なお、南側路側帯の南側端沿いには本件事故現場の約二〇メートル東寄りの地点から西方に向かつてガードレールが設置されている。)であり、最高速度が時速五〇キロメートルに規制されていること、本件事故当時、本件事故現場付近を、先行の運転者不明の自動車に続いて、野中車、山田車、石田車、原告車の順で時速約四〇キロメートルで走行中、前方道路の渋滞のために右先行車が停止しようとしているのに気付いた被告野中が急制動を掛けて野中車を停車させたところ、これに気付いた被告山田が山田車を急停止させようとしたが間に合わず、野中車に追突し、続いて被告石田も山田車が停止しようとしているのに気付いて石田車を急停車させようとしたが間に合わず山田車に追突し、そのはずみで既に停止していた山田車と野中車を前方に押し出して前記先行車に追突させ、さらに、右のように石田車が急制動と前車への追突によつて急停止したため、石田車の四ないし五メートル後方の道路左(南)側寄りを進行していた原告車が石田車の左後端部に衝突したこと、及び本件事故当時、本件事故現場付近の道路の交通量は多く、右渋滞は、本件事故現場の約四〇〇メートル西方の交差点の信号待ちによるものであつたことがそれぞれ認められ、原告本人尋問(第一回)の結果中右認定に反する部分は、前掲他の証拠に照らして信用できず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定の道路状況及び事故態様に、本件事故現場のように車両の交通量が多く渋滞が生じがちの片側一車線の道路においては、連続して走行する車両相互間の車間距離は、常に前車の急激な停車に対応し得るほどは空けられていないのがむしろ常態であると考えられることや、野中車は、後記認定のとおり車高の高い車両であるから、その直後を走行する車両からは野中車の前方の状況が見えにくく、前方の状況から同車の動向を予測することが困難なため、同車の動向に対する対応が遅れるという事態が生じがちであると考えられることに鑑みれば、野中車が急停車したことにより、その後方を走行する本件各事故車両がそれぞれその前車との衝突を避けるために急停止しようとしたものの、間に合わずに追突し、最後に原告車が石田車に追突し、転倒するという形で発生した本件原告車の追突・転倒事故(この原告車が石田車に追突して転倒した事故を以下、「本件原告車の追突・転倒事故」という。)とその直前の石田車の運行との間に相当因果関係があるのはいうまでもなく、その前を走行していた山田車及び野中車の各運行(急停止)との間にも相当因果関係があるということができるから、本件原告車の追突・転倒事故は、右各事故車両の運行によつて発生したものというべきである。

2  本件事故当時、被告石田が石田車の、同山田が山田車の、同野中が野中車の各運行供用者の地位にあつたことは当事者間に争いがなく、また、被告日産火災が被告石田との間で石田車を被保険自動車として、被告安田火災が被告山田との間で山田車を被保険自動車として、被告野中との間で野中車を被保険自動車として、それぞれ自賠責保険契約を締結していたことは、原告と被告日産火災、同安田火災との間に争いがない。

1で認定、説示したところと右争いのない事実によれば、自賠法三条但書による免責が認められない限り、被告石田、同山田及び同野中は、自賠法三条に基づき、原告が被つた損害を賠償する責任があり、被告日産火災、同安田火災は、同法一六条に基づき、同法施行令二条一項所定の保険金額の限度で原告が被つた損害額を支払う責任がある。

三  被告らの免責の抗弁について

1  被告石田について

一で認定した事実と前掲乙第一ないし第三号証、丙第七、第八号証、同第一三号証、成立に争いのない甲第二六号証、同第三〇号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる丙第一二号証、昭和五八年八月二五日に山田車を撮影した写真であることについて争いのない検丙第四、第五号証、原告(第一回)、被告石田及び同野中の各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すれば、石田車(車両重量一四八〇キログラム、乗員は被告石田のみ)は、本件事故現場の手前の交差点で、赤信号に従い、野中車、山田車に続いて停車して信号待ちをしたが、被告石田は、右信号待ちの間に、野中車(日産サニーバネツト)がワンボツクスタイプの車高の高い車両で、車内のカーテンやシートによつて車内を通しての視界も相当程度遮られていたため、野中車のすぐ前方の状況は見えなかつたものの、当時、本件事故の車両の交通量は多く、進路前方の上り坂の上にある信号の手前付近では車両が渋滞し始めているのを認めていたこと、被告石田は、野中車及び山田車に続いて石田車を発進させて、時速約四〇キロメートルまで加速し、山田車にかなり接近して約七〇メートル進行したとき、山田車のブレーキランプの点灯に気付いて急ブレーキを掛けたが間に合わず、石田車が山田車の後部にほぼ正面から衝突する形で追突したこと、右追突により石田車は、前記のとおり野中車に追突して停止している山田車(普通乗用自動車マツダサバンナ、乗員は被告山田のみ)と先行の運転者不明の自動車に続いて停止している野中車(乗員は被告野中のみ)を前方に押し出して野中車をその前方〇・五ないし一メートルの位置に停止していた先行車に追突させたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定事実によれば、被告石田に石田車と先行の山田車との間に速度に応じた安全な車間距離をとらなかつたか、山田車が停止しようとしているのに気付くのが遅れた過失があつたために、急ブレーキをかけたにもかかわらず山田車の手前で停止することができず、同車に追突して停止したものと推認される。

なお、被告石田本人尋問の結果中には、本件事故当時、石田車と山田車の車間距離は車にして二、三台分、約一〇メートルはあつたうえに、山田車のブレーキランプがまさに点灯するところを見て急制動措置を講じた旨延べる部分があるが、時速四〇キロメートルで走行する自動車が急停止する際の空走距離は約六・七メートルから一一・一メートル程度とされており、前車のブレーキランプの点灯に即座に反応して急ブレーキを掛けたとしても、右空走距離に相当する距離だけ前車との距離が縮まるのであるから、仮りに石田車と山田車の間の車間距離が被告石田の述べるとおりであつたとしても、右の一〇メートルという車間距離は時速四〇キロメートルで走行する際の余裕をみた安全な車間距離であるということはできないうえ、前認定の山田車の野中車への追突の態様と石田車の山田車への追突との態様とを比較すると、石田車は山田車よりもはるかに高速で山田車に追突しているものと推認されるから、石田車と山田車の車間距離が一〇メートルあつたとすれば、被告石田は山田車のブレーキランプの点灯に即座に反応して急ブレーキを掛けていないことになり、従つて、被告石田には、野中車によつて前方の視界が制約されているうえ、前方車両の渋滞が予見し得る道路状況にあつたにもかかわらず、漫然と時速約四〇キロメートルで走行していたために、車間距離不保持ないし前方不注視の過失により山田車に追突する事故を起こしたものといわざるを得ない。

もつとも、本件原告車の追突・転倒事故が被告石田の右過失と無関係に発生したものであれば、被告石田には、本件原告車の追突・転倒事故の発生についての過失がないということになるので、以下、検討する。

まず、被告らは、停止した各事故車両の左側には単車が十分に通行できる余地があつたと主張するが、前掲甲第二六号証、同第三〇号証、乙第一号証、丙第一三号証並びに被告石田及び原告(第一回)の各本人尋問の結果を総合すれば、幅一・六九メートルの石田車が前認定のような幅員でガードレールの設置されている本件事故の西行車線をセンターラインとの間に約一メートルの間隔を置いて走行していたので、石田車とガードレールの間隔は約八〇センチメートルしかなく、しかも路側帯には路肩に生い茂つた草がはみ出して単車の走行の妨げとなつていたこと、これに対し原告車の幅は約〇・六四メートルであつたことがそれぞれ認められ、右事実によれば、石田車の左側には、同車の急停車に対応して余裕をもつて左側をすり抜け得るほどの余地があつたとは認め難いから、本件原告車の追突・転倒事故が被告石田の過失と無関係に発生したものということはできない。

また、被告日産火災、同安田火災は、原告車は、石田車が山田車に追突して停止したのち二ないし三秒後に追突しているから、本件原告の追突・転倒事故と被告石田の過失との間には相当因果関係がない旨主張し、被告石田本人尋問の結果中には、山田車に追突した二ないし三秒後で、追突後サイドブレーキを引き外に出ようとしてドアに手な掛けたときに原告車に追突された旨の右主張に副う供述部分があるが、原告(第一回)及び被告野中の各本人尋問の結果によれば、石田車の山田車への追突は山田車の野中車への追突に続き、瞬間的ともいえるごく短時間の間に連続して発生していることが認められるのに、被告石田本人尋問の結果中には、山田車が野中車に追突してから石田車が山田車に追突するまでに三ないし四秒程度の時間が経過していると述べる部分もあつて、同被告の時間の観念が不正確であることがうかがえるので、右供述はそのままは信用することはできず、かえつて、前認定のとおり、本件事故当時、本件道路の車両の交通量は多く、しかも本件事故は信号待ちをして発進した間もなくの事故であることに、原告本人尋問の結果を総合すると、原告車は、石田車の四、五メートル後方を走行しており、原告が格別脇見等をしていたわけではなかつたが、前認定のような追突により石田車が異常な急停止をしたため、これに対応できずに追突したものであることが認められるから、本件原告車の追突・転倒事故が被告石田の前記過失と無関係に発生したものということはできない。

従つて、その余の要件の存否について判断するまでもなく、被告石田についての免責の主張は理由がない。

2  被告山田について

前認定のとおり、山田車は、先行の野中車の急制動による停止に対応することができず、同車に追突しているのであるから、被告山田には、先行車である野中車との間に速度及び道路状況に応じた安全な車間距離を保持していなかつた過失又は山田車が停止しようとしているのに気付くのが遅れた過失のいずれかがあつた蓋然性が高いと考えられるところ、右のような過失がなかつたことを認めるに足りる証拠は存しない。

もつとも、前認定のとおり、原告車は山田車に直接追突しているのではなく、山田車にはまず石田車が追突し、その後に原告車が追突しているので、被告山田に前記のような過失があるとしても、右過失と本件原告車の追突・転倒事故との相当因果関係が問題となり得るが、前認定のとおり、石田車の山田車への追突は山田車による野中車への追突に続き、瞬間的ともいえるごく短時間の間に連続して発生しているのであるから、石田車の山田車への追突には被告石田の、原告車の石田車への追突には原告の各過失が介在しているとしても、被告山田が前記のような過失のために山田車に急ブレーキを掛け、それにもかかわらず野中車の手前で停止することができずに追突したことが、石田車の追突の原因となり、さらに連鎖的に原告車の追突の原因にもなつているものと考えられるところ、これを覆して相当因果関係を否定するのを相当とするような事情を認め得るような証拠は存在しない。

従つて、その余の要件の存否について判断するまでもなく、被告山田についての免責の主張は理由がない。

3  被告野中について

前記二の認定事実に被告野中本人尋問の結果を総合すれば、被告野中は、野中車を運転し、先行の運転者不明の自動車に続いて本件事故現場付近を時速約四〇キロメートルで走行中、前方約四〇〇メートルの交差点の赤信号による前方道路の渋滞のために右先行車が停止しようとしているのに気付いて急ブレーキを掛け、右先行車の〇・五ないし一メートル手前で停止したが、その際の右先行車の停止の態様は、右先行車の前方を走行していたかなりの数の車両が渋滞のため順次停止したのに続いて停止したというものであり、被告野中が右先行車の急制動音を聞いたというようなこともないことが認められ、右事実によれば、右先行車は当時の道路状況から予想し得ないような急停止をしたのではないことが推認される。

もつとも、被告野中本人尋問の結果中には、右先行車が急停止したとの供述部分があるが、他方、前車のブレーキランプの点灯を認め、これに対応してブレーキ操作をした場合は空走距離(前記のとおり、時速四〇キロメートルの場合は、六・七メートルから一一・一メートルである。)に相当する距離だけ車間距離が縮まることになるから、車間距離を二メートルしかとつていない場合は、先行車が急制動をし、これによるブレーキランプの点灯に即座に対応して急制動をしても先行車に追突するはずであるのに、先行車との間に二メートル位の車間距離をとつて走行中、先行車のブレーキランプが点灯するのを見て急制動の措置をとり、先行車の〇・五ないし一メートル手前に停止したと述べる部分があり、さらに、前掲乙第三号証(被告石田契約の任意保険の契約会社である住友海上火災保険株式会社の依頼した調査会社の調査報告書)によれば、被告野中は保険会社の事故調査の際には前車が急停車したというようなことは特に主張していなかつたことがうかがわれるので、先行車が急停車したとの前記述部分はにわかに信用することはできず、右供述は前記推認の妨げとはなり得ない。

また、前認定の事実に被告野中本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、野中車は通常のセダン型の乗用車よりも車高の高い自動車であり、直前には特に被告野中の視界を遮るような車両はなかつたことが認められるから、前方道路の渋滞に対応して徐々に減速し、急制動をすることなく停止することができたはずであつたのに、前認定のとおり急停止をしていることからすると、前方道路の車両の通行状況に注意を払わないで漫然と時速約四〇キロメートルで走行し、渋滞のため先行車が停止しようとしているのを発見するのが遅れ、そのため先行車の動向に注意しておればその必要がなかつた急制動をした過失があつた蓋然性が高いといわざるを得ない。

そして、2で述べたのと同様の理由により、右急制動が後続車である山田車、石田車及び原告車の各追突の原因になつているということができるから、被告野中には、本件原告車の追突・転倒事故につき、これと相当因果関係のある過失がなかつたということはできない。

従つて、その余の要件の存否について判断するまでもなく、被告野中についての免責の主張は理由がない。

4  被告石田、同山田及び同野中の責任関係

以上認定の本件事故の原因及び態様によれば、被告石田、同山田、同野中の各不法行為責任は、互いに関連共同し、民法七一九条一項前段所定の共同不法行為の関係にあることが明らかであるから、被告石田、同山田、同野中は、各自、原告に対し、本件原告車の追突・転倒事故によつて生じた損害を賠償すべき責任がある。

四  受傷内容、治療経過及び後遺障害

1  受傷内容

成立に争いのない甲第三号証によれば、原告は、本件事故により右大腿骨骨折、右手第五指脱臼、頭部外傷、腰部挫傷の傷害を受けたことが認められる。

2  治療経過

前掲甲第三号証、成立に争いのない甲第四号証、同第一〇号証の一、同第一一号証、同第一七ないし第二三号証、丙第一四ないし第一六号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一二号書の一、六ないし一〇、一三、一五、一六及び原告本人尋問の結果(第一、二回)並びに弁論の全趣旨を総合すれば、原告は事故当日に第一病院に救急搬入されて入院し治療を受けた結果、前記傷害のうち、右手第五指脱臼、頭部外傷、腰部挫傷については、比較的早期に治癒したが、右大腿骨骨折については、観血的整復術(骨折部を金属プレートで固定)を行つたのち、薬物療法及び理学療法を続けていたものの、原告が骨癒合しにくい体質で仮骨がなかなか形成されなかつたため、右プレートを抜去しないままで経過観察を続けていたところ、骨折部に偽関節が形成されたため、昭和五九年一月七日に骨移植術を施行したが、その後も依然として骨癒合状況は不良で偽関節状態は解消されなかつたこと、昭和五九年二月ころ、原告に肝機能障害の存在が指摘されたが、原告には肝機能障害の既往症はなく、右障害自体も一時的な軽度のものであつたこと、同年四月一日には、骨折については時間の経過による自然治癒を待つという第一病院の担当医の判断のもとに退院を許可され、将来はプレートを除去する前提で通院による経過観察を受け、右医師の勧めにより、長期間のギブス固定によつて運動制限が生じていた右膝関節の機能訓練や適度の運動を自宅でも行つていたこと、この間、骨癒合はまだ十分でなく骨折部の可動性が残つていたが、プレート固定により症状が一応安定していたことから、同年八月一八日に第一病院で診断を受けた後遺障害診断書(甲第一〇号証、丙第一五号証)に基づいて自賠責保険の請求手続をし、同年一〇月ころ、自動車保険料率算定会により、右膝関節の機能障害につき自賠法施行令二条別表の一〇級一一号に、右下肢短縮(左右差一センチメートル)につき同一三級九号に各該当し、これらを併合すると九級に相当するとの認定がなされたこと(自賠責保険において原告の後遺障害が併合九級であるとの認定がなされていることについては、原告と被告日産火災、同安田火災との間に争いがない。)、ところが、同年一一月一一日に原告が自宅近くを散歩中に、地面に腰を下ろしていた状態から立ち上がろうとして骨折部に体重がかかつた際に骨癒合不良による骨折部の可動性のためにプレートが破折して同箇所が再度骨折したので、同日から再び第一病院に入院して髄内釘による固定術と再度の骨移植術を受けたが、その際大腿骨の一部を切除したために脚長差が三センチに拡大したこと(原告の自賠責保険追加支払の請求に基づき、昭和六一年一二月、右脚長差につき一〇級八号の認定を受けたが併合九級の認定は変らなかつた。)、原告は右再骨折による髄内釘固定術等の手術を受けた際の輸血によるものと考えられる難治性の非A非B型肝炎に罹患し、右手術のための入院継続中の昭和六〇年一月ころから、GOT・GPTの数値が急激に増悪して(同月八日には正常値八ないし四〇KUのGOTが九一九KU、正常値五ないし三五KUのGPTが一四四三KUにまで達した。)黄疸が出、一時は軽快したものの、同年七月ころから再度肝機能障害が認められるようになり、全身の倦怠感が著明で、食欲不振が継続する状態が続いたので、昭和六二年一〇月三一日まで第一病院に入院して治療を受け、その後も請求原因3(一)(2)記載のとおりに第一病院に入・通院(入院日数合計一四七一日)したが、右肝機能障害は完治せず、入院治療によつて軽快しても退院して自宅療養をすると再度GOT・GPTの数値が上昇するという状態が継続し、昭和六三年一〇月には、池田回生病院の大岡照二医師により難治性の慢性肝炎の状態になつたものと診断され、以後肝炎治療の専門医である同医師によつて様々な治療方法が検討され、施されたが原告の肝機能障害の症状は完治するに至らず、少しでも無理をすれば増悪し、安静と治療によつて緩解するという一進一退の状態のまま今日に至つており、この状態は今後も継続し完治する可能性は少ないことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定事実によれば、原告の本件受傷による後遺障害は、昭和六三年一〇月ころに、その全部の症状が固定したものと認めるのが相当である。

なお、被告らは本件事故と右肝機能障害との間の相当因果関係を争うが、成立に争いのない甲第二七ないし第二九号証によれば、輸血による非A非B型肝炎ウイルスの感染については、昭和六三年現在においても防止法は確立しておらずそのウイルスも発見されていないので、輸血例の一定割合については非A非B型肝炎の罹患が不可避であり、その割合は一〇パーセント前後にも達すること、輸血後の非A非B型肝炎は慢性化率が高く、三〇ないし五〇パーセントが慢性化するとの報告もあることが認められるところ、前認定のとおり、原告の肝炎罹患の主要な原因と考えられる昭和五九年一一月の固定及び骨移植の手術(輸血)は、骨折部の完全な癒合を待つべく経過観察中に、医者に許容されている程度のリハビリテーシヨンを兼ねた運動をする程度で、地面に腰を下ろした状態から立ち上がるという右許容の範囲を逸脱したとはいえない動作で荷重がかかつた際のプレート破折のために必要になつたものであるから、原告の非A非B型肝炎への罹患及びその慢性化と本件事故との間には相当因果関係を肯定することができる。

3  後遺障害

前掲甲第一〇号証の一、丙第一五、第一六号証、成立に争いのない甲第一〇号証の二及び原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告の右膝関節は昭和五九年八月現在で運動可動域が屈曲で自動三〇度、他動四五度に制限(健側はいずれも一三〇度)されており、現在も同関節に運動制限があるために和式便所の使用や正座は不可能で、階段の昇降や自動車を運転する際のペダルの踏み変えが困難な状態であることが認められ、右事実によれば、原告の右膝関節には、運動可動域が健側の半分以下に制限された運動制限が残存しているということができるから、原告の右後遺障害は自賠法施行令二条別表の一〇級一一号に該当する。

また、前認定のとおり、原告の右下肢は右大腿骨骨折の治療に伴つて左下肢に比して三センチメートル短縮しており、右後遺障害は同一〇級八号に該当する。

さらに、原告には、前認定のとおり肝機能障害が残存し、右障害も後遺障害として症状固定の状態にあるところ、原告は、右障害のために現在においても全く稼働することができないので、右障害は同五級三号(胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの)に該当する旨主張するが、前掲甲第一二号証の一、六ないし一〇、同一八号証、同二〇号証及び原告本人尋問の結果(第一、二回)を総合すれば、原告は肝機能障害が増悪と緩解を繰り返す状態が続いており、GOT・GPTの数値が上昇すると全身の倦怠感が強まり、食欲不振が続き、就労も困難となるが、平均的に見れば、重労働こそ無理であるが、事務等の軽易な労務であれば治療を継続しながら服することは可能であると認められ、また、前認定事実によれば、原告は自動車の運転もしていることがうかがわれるので、原告の肝機能障害は同九級一一号(胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの)に該当するものと認めるのが相当である。

そうすると、以上の原告の後遺障害は併合して同八級に相当することになる。

五  損害額

1  付添看護費 二六万八〇〇〇円

前掲甲第三、第四号証、成立に争いのない甲第五、第六号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は、前認定の入院期間のうち、昭和五八年八月二〇日から同年九月二七日まで、昭和五九年一月七日から同月一八日まで及び同年一一月一一日から同月二六日までの計六七日間、常時付添による看護ないし介助を必要とし、原告の妻が付添つて看護ないし介助をしたことが認められる。

右事実によれば、原告は、右期間中に一日当たり四〇〇〇円、合計二六万八〇〇〇円の付添看護(介助)料相当の損害を被つたものと認めるのが相当である。

2  入院雑費 一三九万七〇〇〇円

前認定の原告の受傷内容、治療経過に鑑みれば、原告は前認定の入院期間中に一日当たり一〇〇〇円程度の雑費を要し、原告主張額である一三九万七〇〇〇円を下らない雑費を要したものと推認することができる。

3  休業損害 一三四七万八九一七円

原告本人尋問の結果(第一回)及び弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一三号証の一ないし八及び原告本人尋問の結果(第一回)並びに弁論の全趣旨を総合すれば、原告は、本件事故当時、訴外株式会社太陽神戸銀行に勤務し、本件事故前三か月間に平均月額三〇万八八二二円の給与の支払を受け、本件事故前一年間(支給月は七月と一二月)に一四〇万〇七〇〇円の賞与の支払を受けていたが、本件事故による受傷のために事故日から引き続き欠勤しており、そのため事故のあつた昭和五八年八月から昭和六一年一二月までの間については給与及び賞与として合計一三二〇万六一四七円が支払われたが(なお、この間、昭和五九年四月には基本給が九九〇〇円昇給している。)、昭和六二年一月以降は給与も賞与も支払われていないことが認められる。

右事実に前認定の治療経過並びに後遺障害の内容及び症状固定時期を考え合わせると、原告は、本件事故に遭わなければ、給与として、昭和五八年八月から同五九年三月までの間には少なくとも月額三〇万八八二二円、昭和五九年四月から前認定の症状固定時の直前である同六三年九月までの間には少なくとも月額三一万八七二二円、賞与として右両期間中に少なくとも年額一四〇万〇七〇〇円、合計二六六八万五〇六四円を得られたはずであつたのに、本件事故により右両期間中欠勤を余儀なくされたために、現実に支給を受けた右給与及び賞与の合計額との差額である一三四七万八九一七円相当の休業損害を被つたものと認められる。

なお、原告は、毎年四月に四パーセントずつ昇給するものとして休業損害を請求しているが、原告が本件事故に遭わずに正常に勤務しておれば一定の昇給があつたであろうということは推認し得ないでもないが、右主張のとおりの昇給の蓋然性があることを認めるに足りる証拠はなく、前認定の額を超えて昇給額を確定するに足る証拠も存しない。

4  逸失利益 二九二五万一八二二円

前掲甲第一三号証の一及び原告本人尋問の結果(第一、二回)並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和一七年一二月一三日生の男性で、本件事故当時、訴外株式会社太陽神戸銀行池田支店に案内係として勤務していた者であり、本件事故後前認定のとおり欠勤しているが、平成二年五月現在なお同銀行(但し、合併により「株式会社太陽神戸三井銀行」と行名が変わつている。)に在籍していることが認められ、右事実に前認定の原告の後遺障害の内容及び程度、特に原告の肝機能障害は無理をすれば増悪し、安静と治療によつて緩解するという一進一退の状態が続いているが、前認定の原告の事故前の仕事内容は、その性質上比較的長時間の立位の継続を要求されることがあるとしても、就労が不可能とされている重労働には当たらないと考えられるから、銀行側で一定の配慮をすれば復職が全く不可能ではないとも考えられることとを考え合わせれば、原告は右後遺障害により、就労可能期間を通じ平均してその労働能力の四五パーセントを喪失したものと認めるのが相当であるところ、前掲甲第一七号証及び原告本人尋問の結果によれば、原告は本件事故に遭うまでは健康であつたと認められるから、症状固定時である昭和六三年一〇月(当時原告は満四五歳)以降六七歳まで二二年間就労可能であつたものと推認される。そこで、前認定の原告の本件事故当時の平均年収五一〇万六五六四円に前認定の基本給の昇給分を加算した五二二万五三六四円を基礎収入とし、ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して原告の後遺障害による逸失利益の本件事故当時の現価を算定すると二九二五万一八二二円(一円未満切り捨て)となる。

(計算式)

5,225,364×0.45×(16.8044-4.3643)=29,251,822

5  慰謝料 九〇〇万円

前認定の原告の受傷内容、治療経過並びに後遺障害の内容及び程度、その他本件証拠上認められる諸般の事情を考慮すれば、本件事故によつて原告が受けた精神的・肉体的苦痛に対する慰謝料は、傷害に対する分が三〇〇万円、後遺障害に対する分が六〇〇万円とするのが相当である。

六  消滅時効の主張について

被告らは、原告の損害賠償請求権について、原告の後遺障害は昭和五九年八月ないし九月に症状が固定したことを前提に、原告が右時点で損害を知つたとして消滅時効を主張しているが、前認定のとおり、原告は、右時点ではいまだ入院治療中であり、原告の後遺障害のすべてについて症状が固定したのは、前認定の肝機能障害の症状固定時期である昭和六三年一〇月ころであるから、この時期に至つて初めて本件受傷による損害の全容を知り得る状態になつたものということができ、かつ、交通事故による損害賠償請求においては、後遺障害の内容が明確になつた時点で一括して全損害を請求するのが一般であつて、とりあえず請求できるものから請求するという態度をとらなかつたからといつて、症状固定まで治療に専念した(通常の場合は専念せざるを得ない。)被害者を権利の上に眠るものということはできないから、本件事故による原告の損害賠償請求権及び自賠法一六条に基づく被害者請求権の消滅時効は右時点から進行を開始するものと解するのが相当である。

そうすると、本訴提起時には右両請求権とも消滅時効が完成していないことが明らかであるから、被告らの主張は理由がない。

七  過失相殺

前認定の事実に、前掲検甲第一号証及び原告本人尋問の結果(第一回)を総合すれば、原告は、本件事故現場手前の交差点で信号待ちをしたのち発進し、発進直後に石田車と並びかけたこともあつたが、以後石田車の左斜め後方の道路左側寄りを進行し、本件事故直前は石田車の四ないし五メートル後方左側寄りを時速約四〇キロメートルで進行していたこと、本件事故当時、本件事故現場の上り坂はその上方から渋滞車両が順次停止し始めており、右交差点で信号待ちをしている間に、原告がそれを見ることはでき、走行中においても右状態を視認することは不可能ではなかつたこと、本件事故現場の道路は、原告の通勤経路で、原告車に乗つて走り慣れた道路であることがそれぞれ認められ、原告本人尋問の結果(第一回)中右認定に反する部分は前掲他の証拠に照らして信用できず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定事実に前認定の本件事故の態様及び本件事故現場の道路の状況を考え合わせると、原告には、自車の直前の車両だけでなく、さらに前方の車両の走行状況にも留意しながら、原動機付自転車である原告車の法定最高速度の時速三〇キロメートルを遵守するとともに、先行車との間に安全な車間距離を保持して走行すべきであつたのに、これを怠り、石田車との間にわずか四ないし五メートルの車間距離しか置かないまま時速約四〇キロメートルで追尾進行した過失があつたものといわざるを得ない。

そして、前認定の本件事故の態様及び当時の本件事故現場付近の状況を合わせ考慮すると、原告の右過失が本件原告車の追突・転倒事故の主要な原因になつていると考えられるから、原告の損害額の算定に当たつては、原告の右過失を斟酌して前認定の損害額合計五三三九万五七三九円からその七割を減じ、原告が被告の石田、同山田及び同野中に対して賠償を求め得る額を一六〇一万八七二一円(一円未満切り捨て)とするのが相当である。

八  損害の填補 九七〇万八〇〇〇円

原告が、本件事故につき、被告日産火災、同安田火災(被告山田との契約分から支払)から、傷害分として各一二〇万円、後遺障害分として各三六五万四〇〇〇円、合計九七〇万八〇〇〇円の自賠責保険金の支払を受け、これを前記損害に充当したことについては、被告日産火災、同安田火災と原告との間において争いがなく、被告石田、同山田、同野中との間においては弁論の全趣旨によつてこれを認めることができるから、原告の前記賠償を求め得る損害額から、右填補額計九七〇万八〇〇〇円を差し引くと、残額は六三一万〇七二一円となる。

九  弁護士費用 六〇万円

原告が、本件訴訟の提起及び追行を原告訴訟代理人に委任したことは訴訟上明らかであり、本件事案の内容、審理経過、認容額などに照らすと本件事故と相当因果関係に立つ損害として賠償を求め得る弁護士費用の額は六〇万円と認めるのが相当である。

一〇  被告日産火災、同安田火災の責任限度額

以上認定したところによれば、被告日産火災は、本件事故当時の自賠法施行令二条一項所定の傷害に対する保険金額一二〇万円と八級の後遺障害に対する保険金額六七二万円の合計額七九二万円の限度で保険金額を支払う義務があるところ、前記のとおり、既に傷害に対する分一二〇万円と後遺障害に対する分三六五万四〇〇〇円を支払つているので、後遺障害に対する分の残額三〇六万六〇〇〇円の限度で原告の前記損害額を支払う義務があり、被告安田火災は、傷害に対する保険金額一二〇万円の二契約分二四〇万円と後遺障害に対する分の二契約分一三四四万円の合計額一五八四万円の限度で保険金額を支払う義務があるところ、前記のとおり、既に傷害に対する分一二〇万円と後遺障害に対する分三六五万四〇〇〇円を支払つているので、傷害に対する分の残額一二〇万円と後遺障害に対する分の残額九七八万六〇〇〇円の限度で原告の前記損害額を支払う義務があることになるが、自賠法施行令二条一項が傷害に対する分と後遺障害に対する分とを区別して保険金額を定めた趣旨からすると、右保険金額を互いに流用することは許されないものと解すべきであり、前示認定によれば、原告の後遺障害による損害として賠償を求め得る額は、逸失利益二九二五万一八二二円、慰謝料六〇〇万円の合計額三五二五万一八二二円から過失相殺として七〇パーセントを控除した残額一〇五七万五五四六円に弁護士費用中の後遺障害による損害対応分三九万六一一九円(弁護士費用六〇万円に前記一六〇一万八七二一円分の一〇五七万五五四六円を乗じた額)を加えた一〇九七万一六六五円であり、前記のとおりこのうち七三〇万八〇〇〇円は既に支払を受け、残額は三六六万三六六五円となるから、結局、被告日産火災は後遺障害に対する保険金の残額三〇六万六〇〇〇円、被告安田火災は傷害に対する保険金の残額一二〇万円(原告の傷害による損害額がこれを上回つていることは明らかである。)と後遺障害による損害の残額三六六万三六六五円の合計額四八六万三六六五円の限度で原告の前記損害額を支払う義務がある。

一一  結論

以上の次第で、原告の本訴請求は、被告石田、同山田及び同野中に対し、各自六九一万〇七二一円及びこれに対する本件不法行為の日の翌日である昭和五八年八月二一日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で、被告日産火災に対し、三〇六万六〇〇〇円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和六三年四月一六日から支払ずみまで

民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で、同安田火災に対し、四八六万三六六五円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和六三年四月一六日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条一項を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 笠井昇 本田俊雄 中村元弥)

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